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東京高等裁判所 平成3年(ネ)4316号 判決

主文

一  原判決を取り消す。

二  本件を浦和地方裁判所に差し戻す。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

主文同旨

二  控訴の趣旨に対する答弁

本件控訴を棄却する。

第二  当事者双方の事実の主張は、次の通り付加するほかは、原判決書の事実摘示に記載するとおりであるから、これを引用する。

一  原判決書三枚目裏九行目の「八月六日来日して」を「八月五日来日し、翌六日」に、同四枚目表三行目の「統一」を「一九八九(平成元年)一〇月に統一される」に、四行目の「被告の送達先である」を「西ベルリンにおいてはまもなく別居し、被控訴人がその後被控訴人の肩書住所に移転したこともあって、実質的には」にそれぞれ改め、五行目の末尾に「これに対し、控訴人と被控訴人は日本を何度も訪れていて、日本は控訴人と被控訴人との婚姻生活と牽連性を有する。」を加え、同裏一〇行目の「二〇〇条」を「二〇〇条二号」に改める。

二  原判決書五枚目裏八行目の「認めるが、」を「認める」が、」に、同六枚目表五行目から六行目にかけての「四月二一日被告の許から原告によって拉致されて以来」を「四月二〇日には西ベルリンの被控訴人の許に控訴人とともに戻る約束になっていたにもかかわらず、控訴人と日本に滞在したままであり」にそれぞれ改める。

第三  証拠(省略)

理由

一  離婚訴訟の国際的裁判管轄権については、夫婦の一方が国籍を有する国の裁判所は、少なくとも、国籍を有する夫婦の一方が現に国籍国に居住し、裁判を求めているときは、離婚訴訟について国際的裁判管轄権を有すると解するのが相当である。婚姻生活の実体について審理する必要があることから、実際に婚姻生活が行われた国又は夫婦が共に居住する国の裁判所は、夫婦のどちらかがその国の国籍を有するかどうかにかかわりなく、国際的裁判管轄権を有すると解すべきであることは当裁判所も否定するものではないが、このことが、夫婦の一方の国籍国の裁判所の管轄権を否定する理由になるとは考えられない。最近は反対の見解もあるようであるが、当裁判所の採るところではない(なお、昭和三九年の最高裁判決は、外国人間の離婚訴訟に関するものであって、夫婦の一方が日本人である場合について判断したものではなく、本件に適切な判例ではない。)。

二  被控訴人は、すでに西ベルリンの裁判所において、被控訴人の請求どおりの外国判決がなされているから日本においてもその効力を認めるべきであると主張する。しかし右訴訟は公示送達により手続が進められたものであるから、民訴法二〇〇条二号の要件を欠くことは明らかであり、日本においてその効力を有するものとすることはできない(控訴人が右訴訟の係属を知っていたと認める証拠はない。また証拠によれば、被控訴人は右訴訟提起前において、日本での代理人である弁護士を通じて控訴人の代理人である弁護士と交渉したことが認められるから、公示送達手続によらずに訴訟を進めることも可能であったと認められる。)。

三  親権者の指定については、離婚に伴って必要となる措置であるから、離婚訴訟を管轄する裁判所が同時に管轄権を有すると解するのが相当であり、また離婚に伴う慰謝料請求についても、少くとも、離婚原因となる事実に基づき、離婚が相手方の責任によると認められる場合に請求するものに関する限り、その成否は離婚についての判断と一体として判断されるべき性質のものであるから、これまた離婚訴訟につき管轄権を有する裁判所が同時に管轄権を有すると解するのが相当である。

四  以上のとおり、日本の裁判所も本件につき国際的裁判管轄権を有する本件訴えを却下した原判決は失当であって、本件控訴は理由がある。よって原判決を取り消して、本件を浦和地方裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり判決する。

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